路上の座禅
昨年末、年末休暇に入ってから一度遠出をして以来、次々と押し寄せる寒波と花粉、そして新型コロナの影響で、すっかりバイクから遠ざかっていました。
用事のある時は、車の走行距離を抑えるために出来るだけバイクで出掛けていましたが、走行距離は微々たるものでした。
新型コロナの勢いが全く衰えないのが気がかりですが、暖かくなり、花粉もほぼ無くなった昨今、このままでは根が生えてしまうと思い、久しぶりに走ってみることにしました。
例年なら、TVで花粉予報を言わなくなっても暫くは外に出ないほど慎重なのですが、バイクに乗り出してから自分でも少し変わった気がします。
目標は、場所ではなく走行距離。
まずは4ヶ月前に給油したきりの古いガソリンを燃やしきり、フレッシュなガソリンを給油したいのです。
なので過去の走行距離から逆算し、往復でちょうど残量計がゼロになるくらいの場所を設定しました。
クロスカブは、残量計がゼロ(赤い目盛りの位置)になっても、1L以上ガソリンが残っています。ですが本気でガス欠寸前も狙うのはあまりにもリスキーなので(燃料ポンプ破損の原因にもなる)目盛り上のゼロで良しとしました。
国道を外れ、市街地を抜け、海沿いを走ると、濃厚な潮の香りが寄せてきます。海と空の境界に白い雲が浮かび、雲の隙間から指す陽光が水面に煌めいています。
国道では周囲の車の流れに合わせて走っていましたが、海沿いに出てからは後続車に道を譲り、速度を落としてのんびりと流すことにしました。
4ヶ月ぶりの、まとまった距離のライディング。
どう言えばいいのでしょうか。
例えるなら静かな本を読んでいるかのような感覚。
バイクを走らせることに集中するために余計な雑念が消え、心が落ち着いていきます。「楽しくて仕方がない!」とか、「ワクワクする!」という心の昂ぶりはありませんが、淡々と走り続ける間に自然と鼻歌がこぼれてきます。
峠のワインディングを疾走するのとは違う、座禅にも似た心地良さ。
気がつくと、時間も忘れて走り続けていました。
私は4ヶ月間、この感覚を完全に忘れ去っていたのだなと気が付きました。
これじゃあストレスも溜まるわけですわ…
まあ時間は忘れても、残量計は忘れさせてくれないので、予定通りの目的地でUターンして帰ってきましたけどね。