バイクと私 #21(限界を知った時)
前回、一旦タンクの修理に成功したものの、再び穴が空いて漏れ出したところまで書きました。
再びガソリンを抜き、乾燥させて揮発ガスを飛ばします。
その際、タンクを振ってみるとカサカサと音がしました。再び錆が、タンクの中に沈殿しだしたようです。
塗装表面が虫さされのようにぷつっと膨らんでいるところを紙やすりで磨いてみると、簡単に穴が空きました。塗膜だけで穴が塞がっている状態だったようです。
先端の細いヤスリで穴の周辺を削ってみると、みるみる穴が大きくなっていきます。
文章で書くと短いですが、作業を行っている間は結構絶望的な気分です。
肉眼では分かりにくい小さな穴も含め、最終的に10箇所程度をハンダで埋める必要があることが分かりました。
そして更に問題が。一部の穴が大きすぎて、ハンダだけでは塞がりません。結局、薄い鉄板を買ってそれをタンク表面の形に沿う様に叩いて整形し、その上からハンダを盛り付けることにしました。
全て塞ぎ終え、再びガソリンを注入します。塞ぎきれていなかった穴から再び漏れ始めました。
またガソリンを抜くところからやり直し。
そしてまた同じ作業。
当たり前ですが、タンクを乾かす期間にせよ、はんだ付け作業にせよ、雨の日には出来ません。
天気の良い日が続かないとダメです。
けど天気の良い日って…走りに行きたいですよね。せっかくバイクを持っているのに。なのに、何処にもいけない…
悶々としたまま、3〜4回位繰り返したでしょうか。ようやく、ガソリンが漏れてくる気配はなくなりました。
遂に直った!!!これでやっと、やっとツーリングに行ける。
流行る心を抑えて、まずは近所の試走で状態を確認します。振動でハンダが外れたりしても困りますから。
ところがその前に、エンジンがかかりません。
小一時間、キックスタートや押しがけを繰り返し、ようやくかかりました。
タンクは大丈夫そうでしたが、これではとても安心してツーリングに行けません。
キャブを開けてみると、フロートチャンバーに真っ赤な赤錆が溜まっていました。再び見ることになるとは思っていなかった、絶望的な光景。
それらを取り除き、ジェット類を入念に清掃すると一時的にかかりやすくなりました。
しかしそれも、次の週末になるとまたかかりにくくなります。キャブを開けてみても、さすがに1週間程度ではそれ程錆も溜まっていません。にもかかわらず…
この辺りで、心が少し折れていることを自覚しました。
多分、根気よく原因を調べ、一つずつ修理していけば、また再び走れるようにはなるだろう。けどそのためにどれだけの時間とお金がかかるだろう?
バイクに乗りたくて、走りたくて、免許を取って、バイクも買ったのに、この半年ほどは修理と試走しかしていません。
修理して、調子を整えて、走れるようになるというのは、それはすごく楽しかったです。これは嘘ではありません。
自分で動くようにしたという、DIY的な喜びもあります。
ただ、そのための時間が、走っている時間を大幅に超えてしまうと、フラストレーションが溜まってしまいます。
『もうちょっと、気軽に乗れるバイクに乗り換えたい』
私は、行きつけのバイク屋に相談することにしました。
そして早期退職も考え始めていた私は、ツーリングにも、日常の足にも、買い物にも使いやすいバイクとして、クロスカブ110を選択したのでした。