広い世界には何が見える
社会人になるまで、私はほぼ完全にインドア派で、旅行やお出かけも積極的にはやりたがらない性格でした。
その傾向は20年以上経った今も変わらないと思いますが、知らない土地に赴くこに抵抗を感じなくなりました。
出張の多い仕事に就いてしまった、数少ないメリット(?)と言えるかもしれません。
プログラマならずーっと室内に篭ったまま仕事が出来るだろうと思っていたのに、やってみると実際には日本各地に出張で飛び回る生活。
振り返ってみると、滞在・訪問した都道府県は半数を大幅に越え、単に通過しただけの県も合わせると、ほぼほぼ全国を埋め尽くすまでになってしまいました。
北は北海道から南は沖縄まで。は、誇張でも何でもありません。
おまけに気がつくと日本を飛び出して、中国大陸にまで行ったことも。
就職前の自分に言い聞かせたら、どんな顔を見せるでしょうかね。
まだ仕事を始めたばかりの頃は出張もそれほど嫌いではありませんでした。
それどころか「日本中を股にかける俺、カッコいい」と、ちょっと自惚れていました。
まあ学生時代にほとんど旅行もしたことのない人間だったので、「オトナ」な感じがしたのかもしれませんね。バカですね。
「自分は人より広い世界を知っている」と、なんだか鼻高々になっていたのかもしれません。
たかが出張で、本当にバカですね。
そんな生活を続けて今、出張に対して疲れというか、なんか空虚な感覚がつきまとうようになってきました。
所詮、出張なんて仕事です。ビジネスホテルに泊まり、チェーンの居酒屋やファミレスで空腹を満たし、お客様の工場で作業をしたらさっさと帰るだけです。
「広い世界を知ると、新しい価値観や経験を得る事が出来る」なんていいますが、若干地理に詳しくなるだけで、なにか見聞を広げるなんてことはほぼありません。
逆に「どこにいても人のやることなんて変わんないんだなぁ」なんて、変な悟りが芽生えてしまいました。
最近は、テレビのドキュメンタリー番組などで「生まれてから今まで、この島を出たことがない」というような方の話を聞くと、羨ましいと思うようになってきました。
寧ろ余計なものを見聞きしてこなかった分、こういう人のほうが幸せだったりするのだろうか。
まあ自分でも、極端から極端へ振り過ぎだとは思いますが…
そんな事を思いながら、退職した暁にはバイクであちこちを訪れたいと考えてるんですけどね。
今更見聞を広めたいとは思いませんが…せめて家から出ることすら覚束なくなる前に、空虚でない旅をしてみたいです。