夜の工場にまともな思い出などない

テレビ番組を見ていると、時々過去に訪れたことのある土地が出てくることがあります。

楽しい旅行の思い出なら良いのですが、大抵は仕事で訪れた土地です。

それでも、滞り無く仕事が終わり、お客様と笑顔で別れの挨拶を出来た場所なら良いのですが、長く仕事をしていると、そうでない場所のほうが増えてきます。

そして、良い思い出より嫌な思い出のほうが記憶に残りがちなため、どうしてもマイナス面に偏りがちになってきます。

 

そんな訳で、呑気な旅番組を見ていてさえ、ひとり胸が苦しくなることが多かったのですが、最近はようやくその呪縛から解放されてきました。

それでも不意打ちでその土地の名前などを聞くと「・・・ぐっ」と思うことも、まだあります。

あくまで、ある程度身構えていた時は大丈夫という程度です。

 

似たような話なのですが、

最近は工場見学が流行りらしいですね。特にライトアップ(ではないのでしょうが)された夜の工場が、非現実的で映えるらしいです。

工場が仕事先だった私には、全然理解できませんが。

 

思えば、いろんな工場に入りました。

鼻を突き刺すような悪臭漂う化学プラントや、作業開始10分で汗が尽きるような灼熱の工場、耳をつんざく轟音が轟く工場、逆に甘ったるいニオイが立ち込めているお菓子工場まで。

少しであればいい匂いでも、度を超していると苦痛でしかないということを思い知らされました。

特に「夜中の工場」なんて、工程が遅れてまだ仕事してるか、トラブルで缶詰になってるかが相場ですから、ろくな記憶がありません。

「ああ、まだ帰れない…」と言って見上げるか、「やっと終わった・・・ホテルとって無いや」といって嘆息する時に見るのがライトアップされた工場ですから。

 

なので、入ったことのない工場であっても、それがテレビ画面に出てくると心中穏やかではいられないです。

はやく、テレビ番組を心の底から楽しめるようになりたいです。

 

 

最後にちょっとした昔話を。

以前、食品容器の工場に入ったことがありました。

食品容器とは、要するに食品を入れる器等のことです。スーパーで肉や魚を入れているトレーや、飲み物を入れる容器などがありますね。

もう20年以上前になりますが、その頃はこの手の工場って、すごく入りやすかったのです。

外履きから内履きに履き替えるくらいで、エアカーテンもなく、工場と外部との境も扉一枚と言った感じでした。

 

それが、異物混入事件が社会問題化し、徐々に入場が厳しくなっていきました。

(この工場で・・・というわけではなく、事件がニュースで取り上げられた結果、社会問題になったということです)

最初は「ネット帽をかぶれ」

次に「不織布のツナギを着ろ」

そして手洗い、エアカーテン等が設置され始め、今や現場に持ち込む工具、消耗品まで全部数えるようになっています。

また、こういうところは工場内にトイレがないため、用を足すとまた入場が大変なことになります。

ほぼ食品製造工場と同じ厳しさです。

 

食品と接するものを作成する工場は、これほどの衛生基準を遵守しているのですよと言いたいのと、ここまで厳しくなったのはここ20年程度の事なんですよというお話しでした。

(訊かれても、何というメーカーの何処の工場かはお応えできません)